リセールサイトを運営する米スレッドアップ(THREDUP)が大きな注目を集めている。8月に1億7500万ドル(約185億円)の資金調達と、新プラットフォーム「リセール・アズ・ア・サービス(Resale-as-a-Service)」のローンチを発表。さらにメイシーズ(MACY’S)やJ.C.ペニー(J.C. PENNEY CO. INC.)に続々出店しており、ファッション業界におけるキープレーヤーとして今後も拡大しそうだ。
今回の資金調達に関しては、パークウエスト・アセット・マネジメント(PARK WEST ASSET MANAGEMENT)とアーヴィング・インベスターズ(IRVING INVESTORS)が投資を主導し、すでに同社への投資を行っているゴールドマン・サックス・インベストメント・パートナーズ(GOLDMAN SACHS INVESTMENT PARTNERS)、アップフロント・ベンチャーズ(UPFRONT VENTURES)、ハイランド・キャピタル・パートナーズ(HIGHLAND CAPITAL PARTNERS)、レッドポイント・ベンチャーズ(REDPOINT VENTURES)も参加した。スレッドアップの資金総調達額は、昨年未公開だった7500万ドル(約79億円)を含めると、3億ドル(約318億円)を超える。
グローバルデータ(GLOBALDATA)のニール・サンダース(Neil Saunders)=マネジング・ディレクターは、「確かにスレッドアップにとっては露出が増えるので、この提携は非常にメリットがあるだろう」と認める。一方で、「メイシーズとJ.C.ペニーにとっては、わずかに役立つだけだろう。パートナーシップは彼らのビジネスにおける他の問題を解決することにはならず、彼らの財務を一変させるわけでもない。彼らが既存のシステムに囚われずに考えているのは素晴らしいが、両社ともに安定した状態になるまでにやるべきことはたくさんある」と指摘する。
加えて、メイシーズのプライベートブランド「INC インターナショナル・コンセプト(INC INTERNATIONAL CONCEPT以下、INC)」の古着に対するスレッドアップの低い価格設定がどのように受け取られるか、そして、「INC」の新商品の価値を落とさないのかという疑問がある。メイシーズが自社ECで3000点弱の「INC」の商品しか扱っていない中、スレッドアップが定価との価格差がより大きい商品を含む8000点近い「INC」のアイテムを扱っているという、提携における皮肉を無視することはできない。
サンダースは「スレッドアップはとても身近なプラットフォームで、大衆受けする。これこそがメインストリームの百貨店でうまく機能しうる理由の一つだ」とし、次のように語る。「スレッドアップが各店舗に合わせて品ぞろえを調整するため、商品ラインアップはそれぞれの客層に適したものになり、購買体験全体を損なうことなく価値を加えることになる。ただ、メイシーズのプライベートブランドやその他の取り扱いブランドとの“食い合い”を止める手立てはない。これが提携関係において乗り越えなければいけない問題であり、そのため、両百貨店は消費者にとってさらに魅力的になるように店舗で扱う商品を見直す必要がある」。
さらに、リセールはミレニアル世代やZ世代の心を捉えているようだ。彼らは、ショッピングへのよりサステイナブルなアプローチに関心を抱くだけでなく、両親の持っている古い服に対する嫌悪感を持っていない。「グッチ(GUCCI)」や「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「シャネル(CHANEL)」「エルメスパロディ(HERMES)」などの伝統あるブランドの大ヒットアイテムを、デザインと価格の面で再評価する流れも強まっている。
そして、ラインハルトCEOは今後さらに多くの店舗を開くことに興味を示している。「ベイエリアでのオペレーションは、われわれがポップアップショップの展開方法を考えるとともに、J.C.ペニーとメイシーズへの出店がリセールショップを実現する方法を理解するのに役立った。時が経つにつれて、私は小売店について非常に強気になり、われわれは数多くの小売店を勧誘して回っている。現在はパートナーシップを組んでいる店舗によりいっそう注力し、百貨店のステージ(STAGE)、メイシーズ、J.C.ペニーの店舗網の中で、100以上のポップアップショップを開く計画だ。2020年には、われわれ独自の店舗について考え始めたい」。
また、スレッドアップが小売店に提供するもう一つのサービスに、専用キットを用いたアパレルのリサイクルがある。提携ブランドの顧客がキットを使ってスレッドアップに古着を発送すると、そのブランドで新たな服の購入に使えるショッピングクレジットを獲得できるというものだ。 現在は、「リフォーメーション(REFORMATION)」や「クヤナ(CUYANA)」などが、サステイナブルなロイヤルティープログラムのためにスレッドアップとタッグを組んでいる。「このサービスは大成功を収め、これから3カ月の間にさらに増える予定だ」とラインハルトCEO。「われわれは顧客が自身のクローゼットを片付けることを助けるとともに、小売店が顧客との結びつきを強めることに役立っている。例えば、『クヤナ』は意識の高い消費主義にほかならない。今後、より幅広い小売店でわれわれのサービスを見るようになるだろう」と話す。