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スイスメイドのアメリカ時計、ハミルトン

2019年7月2日

創業したアメリカで愛され、現在では世界のビジネスマンを虜にする時計ブランド、ハミルトン(HAMILTON)。紆余曲折の歴史にインスパイアされたこのブランドの腕時計は、他メーカーにはない孤高のデザインセンスを持つ。今回は、アメリカ生まれの老舗メーカー「ハミルトン」の魅力について紹介!

19世紀末のアメリカで誕生し、現在はスイスで製造を行う老舗時計メーカー。世界初のLED時計「パルサー」を手がけるなど開拓精神に溢れた開発力を持っており、世界初の電池式時計として生まれた独特のケースデザインを持つ「ベンチュラ」などのモデルは今なおファンを増やし続けている。鉄道産業や戦時中の軍用時計供給など、アメリカの発展を支え続けた歴史を持っており、母国アメリカでは大学の卒業時や就職祝いなどの節目にも贈られてきた特別な存在。エレガントなものからアメリカンクラシックなモデルまで、魅力的なラインナップを継続している。

古き良きアメリカの”移民の町”にて誕生したハミルトン
1892年、米ペンシルバニア州ランカスターで発祥したハミルトン。老舗時計メーカーというものは、ひとりの創業者による工房設立からスタートするケースがほとんど。しかしハミルトンはそういった一般的な時計メーカーとは異なり、中小の時計会社が合併と倒産を経てして誕生した稀少な背景を持つ。
ブランド名の由来となった、言論の自由を唱えて戦った法律家「アンドリュー・ハミルトン」が所有していたランカスターの土地に創業したハミルトン。ドイツをはじめフランスやイギリスなど多くの移民で形成されていたランカスターは、技術力のある時計職人も多く、ハミルトンはこうした多種多様なDNAが混ざりあって生まれたブランドだと言えるのかもしれない。

19世紀半ごろからアメリカ全土に渡り急速に発展した鉄道網。創業初期におけるハミルトンの躍進は、鉄道業界を支えたことがきっかけだった。数分の誤差が大事故に繋がりかねない列車の運行において、ハミルトンのポケットウォッチは精度と耐久性に優れており、20世紀初頭には公認鉄道時計として正式採用されるまでに至る。
1902年に登場したポケットウォッチは18型サイズのムーブメント「926」を採用した秀逸なモデルで、総生産量8万個以上のロングヒット製品だった。

「Railroad Approve(鉄道公式時計)」の称号を得たあとの初となるポケットウォッチシリーズは、視認性の高い文字盤と豪華なケースデザインを兼ね備えた非の打ち所のないモデル。30年近くもの期間に渡り製造され、20万個以上が生産された。

鉄道産業の成長に大きく貢献したハミルトンは、その成功から広大な敷地を持つ本社社屋を構え、ランカスターを象徴する巨大企業となったのだ。

戦時中に培われたハミルトンのミリタリーウォッチやパイロットウォッチ開発
今にも世界的な戦争が勃発しそうな空気が広まっていた1910年、ハミルトンは軍用時計の納入を始める。1920年代に入り第一次世界大戦にアメリカが参戦するのと時を同じくして、腕時計の製造に着手したハミルトン。第二次世界大戦時には一般市場へ向けた時計の生産を完全に停止。全ての向上で軍用時計を生産し、100万個以上という驚異的な数の時計を海外で戦う米兵に向け送り出した。
第二次世界大戦用に製造されたものは腕時計だけでなく、演習用マシンガンや爆撃機に採用された軍事用時計も手がけていた。銃や爆弾を発射する際、攻撃の正確な時間を記録するため、ビデオカメラと共に爆撃照準器に搭載された「Bomb Timer(WWⅡ)」。背筋が凍るようなモデル名も、時代背景をリアルに感じさせる。

現在のハミルトンの主力ラインナップにも並ぶ「Khaki」シリーズや、今やコレクター間で垂涎の的となっている「CANTEEN or FROGMEN」など、多くのミリタリーウォッチが戦時中に誕生した。世界各地で転戦するアメリカ軍兵士の腕に巻かれた時計を通じて、奇しくもハミルトンウォッチの名前は世界に広まったのだ。

軍用時計として戦地や航空機で使用され、精度の高さを証明したハミルトン。1957年に発売した世界初の電池式時計「ベンチュラ」は、画期的なテクノロジーとデザイン力で、大戦後の一般市場復活を飾った。1970年には世界初のLEDデジタル表示ウォッチ「パルサー」を発表。このモデルは著名な金属彫刻家アーネスト・トローバーがプロトタイプのデザインを手がけ、”腕につけるコンピューター”として、最先端技術の分野でも優れた開発力を持つことを世界にアピールした。

1974年にはSSIH(のちのスウォッチグループ)の傘下に入り、現在では本格的なスイスメイドのウォッチメーカーへと移行。鉄道時計にはじまり軍用や航空時計、さらには最新テクノロジーも手がけたハミルトン。米ランカスターから時計の聖地スイス・ビエンヌへと拠点こそ変わったものの、今なお過去のアーカイブに着想を得た、このブランドにしか作ることのできない作品で世界を魅了している。

音楽のハーモニーのように革新と現代性をミックスさせたことから名づけられた「ジャズマスター」。現在のハミルトンウォッチの中でも主力のシリーズで、ドレスライクなものからスポーティなクロノグラフモデルまで豊富なラインナップを誇る。エレガンスを極めた「ジャズマスター オートクロノ」などは、いかにもスイスメイドの高級時計といった雰囲気。時代の変化にとらわれないオーセンティックなデザインに仕上げられている。

ハミルトンの創業と同じ1890年代に生まれ、自由や洗練、美意識を象徴する音楽である、ジャズミュージックへのオマージュを込めて、2005年に発表した「ジャズマスター」。なかでも、長年に渡ってトップセラーを誇る「ジャズマスター オープンハート」は、時計の心臓(ハート)と言われるムーブメントが覗く、ユニークで洗練されたデザインで、絶大な存在感を放つ。

大戦後の1957年に発表されて以来、”ハミルトンのアイコンウォッチ”として多くのファンを持つ「ベンチュラ」。クオーツが旋風を巻き起こす10年以上も前の1957年、動力源としてぜんまいの代わりに超小型電気モーターを採用した世界初の電池駆動時計として大きな話題を呼んだ。

A39_Ventura_Original_59891957年発売当初のベンチュラのオリジナルモデル。

テクノロジー以上に、世界を驚かせたのはやはりそのデザイン。時計業界の常識を覆したケースは、キャデラックなどのデザインを手がけたリチャード・アービブによって作られた。左右非対称の斬新なケースはあのエルヴィス・プレスリーも魅了。現行モデルにもオリジナルのDNAは忠実に受け継がれ、誕生から半世紀以上がたつ今なお新鮮さは失われていない。

ミリタリー、パーロット、ダイバーズ、ハミルトンが放つプロ仕様「カーキ」シリーズ
1917年、第一次世界大戦に向かう兵士のためにハミルトンが手がけた最初の腕時計がルーツの「カーキ」。最も正統派の空気を漂わせる「カーキ フィールド」は、1940年代に製造され、アメリカ陸軍が使用したミリタリーウォッチ”ハック”がルーツ。無駄のないフォルムや特徴的なミリタリーカラーなど、ハリボテのファッションミリタリーウォッチには決してなし得ない”本物感”を携えている。

「カーキ アビエーション」は本格派のパイロットウォッチシリーズ。GMTとクロノグラフを組み合わせた実用モデルや、偏流修正角計算を行うインナーベゼルを持つプロフェッショナル仕様のものまで、本格的なものだけがラインナップに並ぶ。

ダイバーズモデルの「カーキ ネイビー」は性能と美しいデザインを併せ持つシリーズ。アメリカ海軍の特殊潜水部隊 “フロッグマン”のために開発された「カーキ ネイビー オープン ウォーター」は無骨なリューズガードが象徴的。100気圧防水の性能もさることながら、独特の着眼点で手がけられたデザインでマリンスタイルを彩る。

ハミルトンの時計と言えば、多くの名作映画で使用されていることでも有名。スクリーンの中で俳優が着用した腕時計が話題に上がるケースは少なくないが、ハミルトンは時計ブランドの中でも随一の出演数を誇る。
古くは1961年、「ブルー・ハワイ」でエルヴィス・プレスリーがベンチュラを巻き、それがきっかけでエルヴィスがこの時計を愛用するようになったというエピソードがある。同じく「メン・イン・ブラック」シリーズもベンチュラのファンを拡大した映画と言えるだろう。
他にも「オーシャンズ11」、「パール・ハーバー」、「ダイ・ハード」、「インディペンデンス・デイ」、「デアデビル」など挙げればキリがない。ハミルトンは実に450作品以上もの映画で採用されるほどに、世界的な俳優やクリエイターたちから愛されるブランドなのだ。

洗練されたクラス感と、クロノグラフならではの知的な魅力を持つデザインは、都会的なドレスウォッチの定番スタイル。日本のみならず世界的なベストセラーモデルは、TPOを問わずに愛用できる万能ウォッチ。

ニューヨークの街並みからインスピレーションを受けたというデザインは、モダンでスポーティー。ストライプダイヤルに、ニューヨークの街を貫くブロードウェイストリートがモチーフのセンターラインなど、ディテールへの拘りを追求している。

1957年に発表されたロングヒットシリーズの現行モデル。オリジナルの意匠を再現したクオーツモデルで、盾のような非対称ケースが圧倒的な存在感を誇る。原子のように先が丸いインデックスデザインもハミルトンならでは。

ハミルトン「カーキ フィールド オート(KHAKI FIELD AUTO)」
男心を刺激してやまない本物志向のミリタリーデザイン。実戦での使用を想定してデザインされたグリーン文字盤や無骨なリューズのおかげで、シンプルなフォルムのなかに力強さが秘められている。

ハミルトン「スピリット オブ リバティ オート クロノ(SPIRIT OF LIBERTY AUTO CHRONO)」
スイスETA社と共同開発したハミルトン専用の自動巻きムーブメント「H-21」を採用したクロノグラフ。アメリカのDNAを感じさせるデザインと、スイスの技術力を融合させたハイブリッドなモデル。

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